【図・写真】オンライン懇親会にサッポロビールの高島社長(上から2段目、左から2列目)も参加した
飲料メーカーが仕掛けるオンライン懇親会が新しい顧客価値を創造する可能性を持つ。好例がサッポロビールの消費者参加型製品開発による「ホッピンガレージ」のケースだ。第4弾として「それが人生」が4月16日に発売された。
発売日の新商品発表会では、司会をはじめ、発案者、同社担当、ブリュワー、本事業のコミュニティーを運営するキッチハイクの担当が、自宅からオンライン会議アプリのZOOMで登壇し、その動画がユーチューブでライブ配信された。進行に合わせ多くのチャットが書き込まれ、臨場感が伝わってくる。
引き続き実施されたオンライン飲み会には、テーブルを自由に移動できる懇親会向きのアプリRemoで、約100人の消費者が参加した。参加者は事前に届けられた新商品1ケースを冷蔵庫で冷やし、そのビールを片手に、全員で乾杯した。飲み会では、登壇者による壇上での話もありつつ、同社の高島英也社長も参加し、テーブルに分かれて交流した。
このプロジェクトは、2018年10月開始以来、消費者から400ものアイデアを受け、16品のオリジナルビールの試験品が極小ロットで作られ、450回ものイベントに、延べ5千人近い顧客が参加した。こうしてビール好きが集うコミュニティーが形成され、そこでのユーザー評価や市場性を踏まえ、4品が商品化された。
このように、オンライン懇親会では、全国から気軽に参加でき、画面越しに登壇者の顔も見やすく、同じ新商品が手元に届くことで感想も共有しやすい。この体験は、他にはない新たな顧客価値をもたらすだろう。
こうしたイベントは、大変だと思うかもしれない。同社も、そもそもリアルでの発表会と懇親会を検討していた。新型コロナウイルス危機のため、延期や無観客での開催という話も出たが、会議アプリをうまく使い、消費者参加型の発表会と懇親会を自分たちの手でやり遂げた。同社土代裕也マネージャーは、「暗い話が多い中、顧客とつながり、生の声が聞けるイベントをしたかった」と説明する。
皆さんも、この環境下での新たな顧客価値の創造に挑戦してほしい。
(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2020)「オンライン懇親会 ― コロナ機に顧客価値創造(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』2020年5月20日付け、p.7.