西川英彦・金雲鎬・水越康介(2010)「ネット・コミュニティにおけるアバター効果の考察:日韓アバターサイトの事例分析」『立命館ビジネスジャーナル』Vol.4、pp.17-35.
本稿では、仮想空間「ネット・コミュニティ」におけるアバターサイトに焦点を当て、「アバター」がコミュニケーションや、仮想世界さらに現実世界での消費行動にもたらす影響、すなわち「アバター効果」について考察を行う。 近年のインターネット技術の発展に伴い、ブログやSNS といったネット・コミュ ニティが一般化する中で、ネット・コミュニティに関する多くの研究が進められ てきた。だが、これらの考察において、アバターサイト、あるいはアバターの存 在に焦点を絞った研究は未だ少ない。それゆえに、ネット・コミュニティにおいて、 なぜアバターを介在させる必要があるのか、あるいは介在することによっていかなる効果が期待されるのかはわかっていない。これまで、ブランド・コミュニティ に代表されるネット・コミュニティ研究においては、テキストに焦点を当ててい たために、ネット・コミュニティ内を流通し始めた「モノ」を捉える事が出来なかっ た。一方、消費者行動研究における、より直接的にアバター効果を考察してきた 研究においては、コミュニティという視点が存在していなかった。 こうした課題に対して、本稿では、日韓のネット・コミュニティの代表的なアバターサイトである韓国の「Cyworld」、日本の「Yahoo! アバター」の事例分析を通して、アバター効果の確認が行われる。アバターによってグラフィカルに可視 化されることで、ネット・コミュニティにおけるコミュニケーションは活性化す ると想定される。そして同時に、ネット上でのコミュニケーションの活性化は、アバターの存在によって、仮想消費さらに現実消費に対しても影響を与えるものと想定される。このように本稿では、事例分析を通して、アバターには大きく2 つの効果が期待されることが示される。