column 2016.3.7

「消費者創造資源による法人市場(下)― 3400万件のQ&Aを活用:OKWAVE(日経MJヒット塾)」『日経MJ』

 消費者創造資源をうまく活用すれば法人市場を生み出す可能性をもつ。今週はQ&Aサイト大手のオウケイウェイヴを取り上げる。

 何か疑問をもった消費者が「OKWAVE」上で質問を投稿すると、誰かほかの消費者が回答して無事解決できた消費者がお礼するという流れだ。

 消費者が質問をしなくても回答を探しやすいという工夫もある。人工知能(AI)で消費者の質問・回答の閲覧履歴を分析し、季節や時間帯に合わせて閲覧数が伸びそうな質問・回答をサイトに表示する。

 サイトの利用者は月間3100万人。15年にわたる多様な質問・回答データは3400万件に上り、お礼は4500万件を超える。同社は、この消費者創造資源を多重利用し、法人市場を作り上げてきた。

 まず、シンプルに消費者創造資源のデータを「顧客の声」として分析する。

 例えば、「住まい」に関する質問と回答の内容から住宅購入前後の関心事の変化を男女別に分かる。男性は育児や家族サービスに熱心になり、女性は料理やガーデニングへの関心が高まるという。このように、あるテーマに関係する質問・回答・お礼の単語や文章、年代・男女・地域などユーザー属性を分析するサービスを提供することで依頼企業は製品開発、集客のアイデアにつなげられる。

 価格は200万円程度で、対象の範囲によって変動する。これまでに約70社から分析依頼を受けた。

 次に、消費者創造資源を企業と共有するサービス。パソコンやプリンター、デジタルカメラなどのデジタル機器は他社製品との連携が必要だ。そのため、自社のコールセンターやFAQ(よくある問い合わせ)で対応できない場合も多い。

 そこで、OKWAVE上でキーワードを設定して対象の製品・サービスに関連した質問・回答を抽出。依頼企業のFAQサイトで表示できるようにした。

 それだけでなく、企業サイトでの消費者からの新たな質問に対しても、OKWAVEのサイトと連携して表示する。消費者は2~3時間後には回答してくれるという。企業は営業時間外でも対応。OKWAVEの監視により中傷などの不適切な発言のリスクも回避できる。その結果、企業は問い合わせ件数を減らせ、コールセンターなどの顧客対応コストを圧縮できる。

 価格は標準的な利用で初期費用150万円、月額30万円。エプソン販売や富士通など14社が利用する。

 さらに、消費者創造資源をサポートする中で蓄積された運営システムを企業に販売する。ネット、メールでの問い合わせ対応を管理する仕組みやFAQ作成・管理のサービスをネット上で提供。企業は対応窓口などの社員が見る社内向けの非公開FAQと消費者が見る公開FAQを1つの仕組みで作成でき、問い合わせ対応のコストを削れる。

 価格(個別見積もり)は標準モデルで初期費用200万円、月額利用料35万円。企業や自治体など350のサイトに導入されている。

 同社は、消費者創造資源の多重利用だけでなく、サービス提供の中で蓄積されてきた資源も活用する。

 やはり資源の多重利用が企業にとってだけでなく、消費者にシナジー効果があるかどうかが、継続的成長に向けて肝要であろう。

キーワードプラス

 【情報の多重利用】「情報」は物理的な「モノ」とは違って、そもそも多重利用しやすい性質をもつ。売り手が所有したままそれを何度も売ることができるほか、複製(製造)もほとんどコストをかけず何度も可能。老朽・消耗などの劣化もしにくいのが特徴だ。

西川英彦(2016) 「消費者創造資源による法人市場(下)― 3400万件のQ&Aを活用(日経MJヒット塾)」『日経MJ』2016年3月7日付け、p.2.