【写真】幼稚園読み聞かせキャラバン
自治体が開催するイベントにゆるキャラが登場するのはよく見られる光景だろう。ただ一般企業もキャラクターをうまく活用すれば、いままでにない顧客にアプローチでき、新しい顧客価値をもたらす可能性をもつ。その好例が、ハウス食品台湾営業所のオリジナルキャラクター「カレー熊」によるイベントだ。
台湾でのカレールウの市場規模はゆるやかに縮小している。ハウスは70%前後でトップを維持しつつも、シェアをわずかに減らしていた。50歳以上の購入率は上昇していたが、35歳未満の主婦の購入率が低調なのが課題となっていた。
そこで台湾営業所長の倉持高広氏は2012年に「『子供が食べたくなるカレー』、『親が食べさせたくなるカレー』を目指したコミュニケーションを展開する」という方針をかかげ、若手主婦だけではなく、子供にも直接訴求していく方策を打ち出した。
さらに「おいしさ」「健康」「簡便」というカレーそのものの魅力だけでなく、「作る楽しさ」「食べる楽しさ」「家族団らん」という価値をPRすることを決めた。こうした価値を伝えるため、イベントを中心としたプロモーション活動をすることにした。
その活動の中心となったのが、子供に人気のある「カレー熊」による「幼稚園読み聞かせキャラバン」だ。3年を経て150もの幼稚園で、1万人を超える園児に訴求してきた。
イベントでは、カレー熊がカレー料理をするという大型絵本を読み聞かせる。その終わりに「カレー熊」が登場、会場の子供は盛り上がる=写真。昼食に子供はカレーライスを食べ、最後に試供品やグッズの入った「カレー熊バッグ」を自宅に持ち帰り、リピートにつなげる。一連の様子は、フェイスブックにアップし、拡散を狙う。
幼稚園側にとっても、単なる商品PRだけではない、子供に人気のあるキャラクターによるイベントは、受け入れやすいものとなっているだろう。
ほかにも、年に1度「カレー博覧会」を開催している。和太鼓の演奏や、カレー早食い競争、親子料理教室、カレー熊と一緒のダンスが行われる。2日で1万人超が集まる。
そもそもカレー熊は、2012年のカレー博覧会のために生まれた。子供の反応が良く、継続利用することになった。こうした顧客の反応を絶えず把握していくことが、今後も肝要であろう。(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2015)「「カレー熊」イベント―子供に訴求、親の購入促す(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2015年12月3日付け、p. 17