【写真】「ローソンクルー♪あきこちゃん」のツイッターのアイコン
自社キャラクターをうまく育成すれば、ヒット商品につながる可能性をもつ。先週に続いて、そのケースをみていこう。今週はローソンのキャラクター「ローソンクルー♪あきこちゃん」を取り上げる。
あきこちゃんは、ツイッターを中心に21ものソーシャルメディアで新商品紹介やキャンペーン告知、クーポン配布などを行い、商品をヒットにつなげようとする「推奨者」。そのスタイルは、フレンドリーに感想をつぶやくのが特徴だ。
あきこちゃんは、自社開発で生まれた企業キャラクターだ。それだけでなく、ネット上で顔や声を募集したユーザー参加型開発のキャンクターでもある。
2010年初め、社長から、他社に後れをとっていたツイッターを開始するよう指示があったのが、そもそものきっかけだった。
当時のソーシャルメディアでは、企業はプロフィル画像にロゴを表示し、発信するのが一般的であった。だが、広告販促担当の白井明子氏は、ロゴでは味気がないと、自社キャラクターによるコミュニケーションを提案した。さらに、ユーザーが開発に参加することで愛着が生まれ、販促につながると考えた。
白井氏は自身の名前をつけ、店長時代に顧客から人気のあったアルバイトの女性をイメージしつつ、プロフィルを設定した。
20歳の大学生2年生で、週3回入るアルバイト。マイペースで真面目な性格。漫画や音楽、映画の鑑賞、占いが趣味でナチュラルなもの、お得なもの、かわいいものが好き。どこかのローソンの店舗のアルバイトにいそうな人物像である。
10年4月にツイッターの開始と同時にプロフィルと後ろ姿を公開し、キャラクターの命ともいえる「顔」を募集。900件を超える応募作品の中から選んで、顔が決まった。あきこちゃんのソーシャルメディアでのフォロー数は現在2千万人を超えており、その効果を裏付ける。
では、あきこちゃんは、なぜ推奨者として効果を上げたのだろうか。
1つは、その魅力であろう。白井氏の経験を基に20~30歳代男性というコンビニエンスストアの中心顧客に対して、誰がつぶやいたら良い印象を得られるかを考えた結果、キャラクターが設定されたのだ。さらに、あきこちゃんの顔を顧客から募集したことも、魅力を増している理由だろう。
もう1つは、その信ぴょう性であろう。店舗でスタッフが、軽くお薦めしている感じが良い。一定の知識はありそうで、お仕着せがましくない。本部社員や、店長でもなく、アルバイトスタッフという位置付けが良いのだろう。
だが、キャラクターの設定が良いだけでは信ぴょう性や魅力を維持できない。つぶやく内容は、広告・販促、広報、商品企画、ITなど12の部署による編集ミーティングで決められ、多くの部門が関係する。「あきこちゃんなら、こうは言わない」という議論を重ねていくことで、キャラクターの世界観が守られる。
さらには、消費者のつぶやきも絶えずウオッチして反応を確認している。特定の発言などが猛反発を招く「炎上」のように企業にとってはリスク要因にもなりうるからだ。こうした、絶えざるマネジメントがあきこちゃんを支えている。
やはり先週と同じく、生んだら終わりではなく、キャラクターをうまく育成することが肝要である。
キーワードプラス
【推奨者効果】一般的に推奨者は、テレビCMや雑誌広告で使われる俳優やモデル、専門家などの有名人を指す。その信ぴょう性や魅力が広告効果をもたらす。ただ、発言の炎上もあるほか、生身の人間ならではのスキャンダルというリスクもある。
西川英彦(2015)「自社キャラクターの活用(下)― 世界観守りファンつかむ(日経MJヒット塾)」『日経MJ』2015年11月9 日付け、p. 2