無印良品は、いかにして「無印良品」となり得たのだろうか。そもそもは西友のプライベートブランドとして80年に誕生した。同時期に生まれた多くのプライベートプランドや、その後に西友から生まれたプライベートブランドが残っていないことを考えると、必然的にブランドになったという訳でなく、偶然の連続による産物に違いないだろう。現に関係者の多くが、創業の数年後には「無印良品は消えてしまう」と思っていたのである。
無印良品の経営には、歴代の経営者の想いや、現場でのマネジメントやモノづくりの工夫などのさまざまなイノベーションがあったと考えられる。本稿では、関係者にインタビューしつつ、当時の経営者や責任者の視点にたって、35年に渡る無印良品の経営の変遷を丹念に探ってみたい。では、無印良品を誕生させた経営者、当時、西武百貨店や西友ストアー、パルコ、ファミリーマートなどを擁する西武流通グループ(1985年に西武セゾングループ、1990年にセゾングループに改名)の代表で、西友ストアー(1983年に西友に改名)社長であった堤清二氏(1927年—2013年)の時代から見ていこう。
西川英彦(2015)「無印良品の経営学 第1回:無印良品の誕生」『一橋ビジネスレビュー』第63巻1号、pp.148-163