column 2015.4.9

「OKWaveに学ぶ ― 蓄積資源で市場創造(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 企業に蓄積された資源を、うまく活用すれば、新市場創造の可能性をもつ。その好例が、Q&Aサイト大手のオウケイウェイヴ(OKWave)だ。

 サイトには、15年にもわたる多様な質問・回答データが3300万件、お礼が4300万件あり、月間4000万人が利用する。同社はこの資源を多重利用し収益化する。

 まず、シンプルにデータを顧客の声として分析するサービスだ。依頼テーマに関係する質問・回答・お礼の単語や文章をはじめ、年代・男女・地域などユーザー属性を分析して、サービス改善や製品開発、集客のアイデアにつなげる。例えば、男女別の住宅購入前後の関心事の変化が分析できる=図。住宅メーカーなどの営業活動やサイト改善に役立つ。価格は200万円程度で、対象範囲で変動する。約70社から分析依頼を受けた。

 次に会員の力を依頼企業のサポートに生かすサービスだ。パソコンやプリンター、デジタルカメラなどのデジタル機器は、他社製品との連携が必要だ。そのため、自社のコールセンターやFAQ(よくある問い合わせ)では対応できない場合も多い。

 そこでOKWave上で、対象の製品・サービスに関連した項目を抽出し、ユーザー企業サイトで利用できるようにした。新たな質問に対しても、OKWaveのサイトに表示されるので、会員が2、3時間後には答えてくれるという。ユーザー企業の営業時間外でも対応でき、OKWaveの監視により中傷などの不適切な発言のリスクも回避できる。価格は標準的な利用で初期費用150万円、月額30万円。現在、エプソン販売や富士通など13社が利用する。

 さらにサイトの運営システムを販売する。ネット、メールでの問い合わせ対応を管理する仕組みや、FAQ作成・管理のサービスをネット上で提供する。ユーザー企業は、対応窓口などの社員が見る社内向けの非公開FAQと、顧客が見る公開FAQを一つの仕組みで作成でき、問い合わせ対応のコストを削減できる。

 価格は個別見積もりだが、標準モデルで初期費用が200万円、月額利用料が35万円。企業や自治体など310のサイトに導入されている。

 このように消費者向けのサービスで蓄積された資源を多重利用して、法人向けに市場創造を行った。こうした視点で自社サービスを見直してはどうだろうか。(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2015)「OKWaveに学ぶ ― 蓄積資源で市場創造(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2015年4月9日、p. 15