要約 :
ソーシャル・ビジネス分野は,近年,国内外,そして経済,行政両面から領域からその活動は注目を 集めている。しかしながらその活動は多岐にわたり,実態の把握はもとより,特にマーケティング分野 からの研究は限られている。そこで先行研究の分析と探索的な事例分析を通じて,社会を形成する活動 の中でのソーシャル・ビジネスの位置づけを明確にし,マーケティング研究との接点を明らかにした。 具体的には,現時点における市場に魅力度と社会に存在する資源活用の程度によって形成される4 つの 象限において,両者が共に低い象限に,ソーシャル・ビジネスの存在が見出すことができることを提示 した。またソーシャル・ビジネス活動と他の活動とは社会全体でみれば相互に関連を有していることが 考えられる。そのため,先の2 つの次元と共に他の社会活動との関連性についても考察した。その上で, 非営利組織のマーケティング研究の知見をもとに,関係性への注目,社会と営利性の相克への注目,顧 客概念の再検討の3 つの観点がソーシャル・ビジネス領域におけるマーケティング研究として有用であ ることを確認した。
キーワード:
社会性,営利性/非営利性,関係性,顧客概念,社会資源
廣田章光・水越康介・西川英彦(2014)「ソーシャル・ビジネス発展に向けてのマーケティングの役割と研究可能性」『マーケティングジャーナル』 Vol.34 No.1, pp.6-22, 2014年6月30日