生成AI(人工知能)による業務プロセスの改善。その好例がパッケージデザイン会社のプラグ(東京・千代田)のケースだ。2019年に「パッケージデザインAI」を始め、味の素やカルビー、ユニリーバなど860社が活用する。
伝統的にパッケージデザインの選択は、3~4案から1案への絞り込みを、消費者アンケートで決めるか、調査せずに決めるのが一般的だ。前者の場合も多数案から3~4案に絞る段階は担当者の主観によることが多く、良い案が排除される恐れがある。
こうした課題に対し、プラグはAIを活用し、選択プロセスを劇的に改善した。デザイン案をアップロードするだけで、好感度やヒートマップ、「おいしそう」や「高級感」などのイメージ評価が約10秒で表示される。AIが約1万のパッケージ画像に関する約1千万人の学習データを基に評価を予測する。これにより時間とコストの削減につながる。
また、21年からプラグはAIによるデザイン生成のサービスも開始した。複数のデザイン案の画像をアップすると、AIがパーツを組み替え、デザイン案を生成する。1000案が約1時間で生まれ、評価の予測も表示される。
さらに今年から「商品デザイン用画像生成AI」のパイロット版が始まり、商品コンセプトなどのテキストを入れると、多数のデザイン案が生成される。それらを基にデザイン方針を決め、デザイナーが案を作成する。それらをAIで評価し、案を絞り込む。これらのプロセスを複数回繰り返す。この手法は、9月に発売された「お~いお茶 カテキン緑茶」で利用され、開発期間が大幅に短縮できた=画像。
このように生成AIの有効活用には、生成と評価予測のセットが不可欠である。さらに効率化だけでなくデザイナーの創造性に影響を与えるツールであることがわかる。
プラグの小川亮社長は「大手だけでなく中小企業への導入も目指す」という。社内デザイナーがいなくても生成AIでデザイン案を作れば、言葉では伝えにくいイメージを社外デザイナーと共有でき、外部とのプロセスも改善できる。
(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2023)「デザインへの生成AI活用 評価選定の自動化も不可欠(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』2023年10月13日付け、p.11.