column 2023.9.1

「社内提案、分野外にも 革新生む異種の知識:三菱電機ビルソリューションズ(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』

 社内アイデアコンテストを始めたものの、年々応募が減り苦労している企業も多いと聞く。伝統的な「社内提案制度」の導入がその打開策となる可能性を持つ。好例が、エレベーターや空調などビル設備の開発、製造、保守などを手掛ける三菱電機ビルソリューションズのケースだ。

 同社の提案の流れを確認する。約1万3千人の社員は、業務に関係なく何にでもアイデアを思いついたら、いつでも提案が可能だ。タイトルや問題点、改善案などを書いた提案書を所属長に提出する。この段階で報酬金がもらえる。年間1万件程度の提案がある。

 所属長と対話し、内容がブラッシュアップされる。これが1次評価となり効果のあるものは支社で展開される。

 提案のうち約6%は、全社展開可能な提案として、本社の技術や管理などの主管部門に提案される。なかでも、優れた提案は支社審査により特級アイデアと認定される。

 こうした評価も参考に、本社の主管部門が、全社展開つまり標準化するかどうかを検討し、回答する。採用できない場合は、理由をフィードバックする。

 採用の提案例として、エレベーターの保守作業で使う工具の形を型抜きしたトレーがある=写真。事故につながる可能性が高い工具忘れのリスクや、収納時間を短縮するという工夫である。

 年に1回、主管部門より優秀提案賞と優勝改善賞が表彰される。さらに毎年1件ほどは特許取得にまで至る。

 このように実質的にはアイデアコンテストで、50年以上継続して効果を発揮している。何が優れているのだろうか。

 第一に提案のハードルが低く、応募しやすい点だ。第二に分野外の提案ができる点も良い。異種の知識の関連づけが革新的アイデアを創出するからだ。第三に回答や賞などのフィードバックがあり、モチベーションや学習効果が働く。

 最後に、同社が提案書を現場社員とのコミュニケーション・ツールと呼び、創造性にとって大事な交流を促進していることも重要だ。

(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2023)「社内提案、分野外にも 革新生む異種の知識(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』2023年9月1日付け、p.11.