column 2022.12.23

「アプリで誰でも製品開発 広がる「消費者発案」市場:monomy(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』

   消費者と素材メーカーとのネットワークが、新市場を創造する。消費者自身が、容易に欲しい製品を開発できるだけでなく、他の消費者への販売まで可能とする。その好例が、FUN UP(東京・渋谷)の「monomy(モノミー)」のケースだ。

 消費者は、特別な技術や器具がなくてもスマートフォンのアプリを使って、アクセサリーづくりを開始できる。パーツの中から気に入ったものを選び、直感的に指で動かして自由に組み合わせ、数分間で作品をデザインできる。完成した画像はまるで本物のアクセサリーのようで、試着イメージも同時に確認できる。

 同社は、24万人の消費者とアクセサリーの素材メーカー52社をネットワーク化し、仕入れ・製造・販売を請け負う。パーツは5000種類あり、その組み合わせは無限と言ってもよいだろう。

 納品までは約1週間となる。従来のアクセサリー市場では、企画から販売まで3カ月以上かかるというので大幅な時間短縮である。ロット生産も不要なため、流通プロセスでの無駄な在庫もない。

 1人で何点もデザインする人が多い。作品はアプリで公開され、第三者からの「ライク(好き)」がデザインのインセンティブになる。作品は自身だけでなく第三者が購入できる。消費者は第三者への販売額の1割から3割をデザイン料として受け取れる。

 同社アプリだけでなく、EC(電子商取引)サイトを無料作成できるBASEで自らのブランドサイトを作ることもできる。人気インフルエンサー=写真=などの約100ブランドが開設されている。

 この仕組みは、かばんや靴、家具などの他の品目にも展開可能だ。同社は、アクセサリーと親和性のある、より本格的なジュエリーやスマホケースでの展開を計画している。

 研究者による論文では、多くの分野で、消費者の発案で生まれた製品であるという情報が、販売やブランド価値にプラスの効果をもたらすことが明らかになっている。

 皆さんの企業でもこうした動きにどう対応するかを検討すべきではないか。

(法政大学経営学部教授)


西川英彦(2022)「アプリで誰でも製品開発 広がる「消費者発案」市場(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』2022年12月23日付け、p.11.