SNS(交流サイト)での自社の話題に対し、創造的に適応することが話題を拡散し、ヒット商品やイベントの成功につながる。好例がローソンのSNSのケースだ。
同社は新商品やイベントの情報をメディアへのプレスリリースだけでなく、6つのSNSで継続的に発信する。ツイッターが700万人、LINEが4000万人と非常に多くのフォロワーを持ち、バズらせるのは容易にみえる。
だが、同社のマーケティング戦略本部の白井明子部長は、「自社が狙ってバズらせることは難しい」という。そのため、同社は以下の工夫を実践している。
第1に、発信した情報が、ニュースメディアで取り上げられたら、単にリツイートするか、その情報をもとに再発信する。メディアで話題になっていることを伝えることは、話題が拡散しやすい。自社発信の情報より、第三者であるメディア発信の情報の方が、信頼性が増すからだ。こうして拡散すると、テレビの情報番組で取り上げられやすくなり、さらに多くの人々に情報が拡散される。
第2に、ニュースサイトが記事にしやすい情報発信を心がけることである。2021年9月発売の「生ガトーショコラ」は、約3カ月間で1000万個を突破した=写真。100万個突破などの数字を適時発信することで、ニュースメディアが取り上げやすくなり、それをリツイートすることで、話題が拡散しヒット商品につながった。
第3に、各SNSに適した話題の探索や発信法に変えることである。例えば、Z世代(10代後半~25歳前後)の利用が多いTikTok(ティックトック)は、そこで話題になっていてもツイッターやニュースで話題になっていないことがある。そのため、そこで発信する話題はニュースメディアなどから探すのではなく、TikTokの中で直接探索する方法に切り替えた。
さらに話題となる投稿も独特で、面白いカットが連続した縦型動画が求められる。自社対応では難しく、TikTok用の動画をZ世代が中心の制作会社に依頼している。
SNSをうまく使えていない企業は、SNSで自社の話題を探索し再発信することから始めてはどうだろうか。
(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2022)「企業のSNS活用策 まずリツイートから開始(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』2022年8月5日付け、p.11.