大規模オンラインイベントの参加感。リアルでは当たり前の感覚がオンラインでは難しい。その課題に挑戦したのが、ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)のファンが集うイベント「よなよなエールの超宴(ちょううたげ)」のケースだ。
2015年の北軽井沢のキャンプ場での1泊2日の開催に約5百人が参加したことから始まり、18年秋は東京・お台場に約5千人が集まり、19年春は北軽井沢同所に約千人が参加した。
同社の10種類以上のビールが用意され、参加者全員での乾杯や、テイスティング講座、ライブ演奏、キャンプファイアー、フォークダンスなどを実施。ほぼ全ての企画でスタッフと顧客が直接コミュニケーションできるように設計。同社では「密着プレー」と呼ばれ、顧客のファン度を高める手法として定着している。
昨年は、コロナ禍のためリアル開催は中止されたが、一部ファンからの熱望もあり、オンラインでの「おうち超宴」を5~6月に開催。簡単に参加しやすいYouTubeで実施され、スタッフと乾杯、テイスティング講座、音楽ライブ映像の配信など、リアルと同様の企画が実施された。
延べ約1万人が参加したが、アンケートの満足度は、リアル開催に比べやや低い結果で、参加感や双方向性がないことが課題となった。
課題を踏まえ、オンラインイベント「〆(しめ)宴」=写真=を12月に2度開催。Zoomに切り替え、リアルタイムでのコメントのやり取りや、クイズ、参加者へのインタビュー、大抽選会などを実施。2次会として「おかわり宴」も開催され、グループに分かれスタッフが参加者と行う密着プレーが再開した。
約1500組が参加し、遠方からの参加比率がさらに増加した。満足度は前回と変わらなかったが、視聴時間が前回の平均18分から平均118分へと大幅に延びた。新たな企画が参加感をもたらしたことが要因だろう。
このように単にリアル版のコピーではなく、オンラインの特性や課題を理解し、リアルを超えるかもしれない新たな企画に挑戦し続けることが肝要であろう。(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2021)「ヤッホーの「超宴」 ― オンラインの壁に挑む(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』2021年4月30日付け、p.11.