要約:
目的
この論文の目的は、3つの異なる採用方針(専門・言語・異文化考慮の採用)と、多国籍企業(MNC)の外資系子会社への影響を調査することである。
デザイン/方法論/アプローチ
本研究では、3つの異なる採用方針と、外資系の親会社から子会社への知識移転との関係を調べる。データは、日本で営業しているMNCの子会社の現地マネージャーに対して、アンケートにより収集する。仮説は、最小二乗回帰(OLS)で検証する。
発見
この研究結果は、3つの採用方針のそれぞれが、MNCの知識移転に正の影響を与えることを示す。特に、外資系子会社が買収を通じて設立される場合、専門考慮の採用がもつ正の効果が強まる。専門的訓練を提供することで、異文化考慮の採用が知識移転に与える正の効果も強化される。
研究の限界/インプリケーション
この研究にはいくつかの限界がある。 サンプルサイズが小さく、データは単一の国から収集された。さらに、組織階層内の回答者の地位は考慮されていない。こうした限界にもかかわらず、この研究は、異なる採用方針と組織内の知識移転との関係に関する将来の研究に向けた最初のステップと考えられる。
実践的インプリケーション
この研究結果は、専門考慮の採用だけでなく、言語や異文化考慮の採用も、組織内の知識共有にとって重要であることを示す。この研究は、異文化理解を持つ現地の従業員が専門的訓練を受けた場合、親会社との知識共有を通じて、子会社の業績を改善する可能性があることを示唆する。
独創性/価値
この研究は、採用における3つの重要な要因(専門能力、言語能力、異文化能力)の複雑なメカニズムと、知識移転への影響を経験的に調査した。とりわけ、この研究では、国際経営研究の分野において、専門考慮の採用に比べて注目されていない、 言語や異文化考慮の採用を強調している。さらに、この研究では、人的資源管理分野において、ほとんど調査されていない、国境を越えた環境での採用と知識共有の関係に焦点も当てている。
キーワード:
知識移転、専門的訓練、子会社の成果、情報と知識経営、異文化考慮の採用、言語考慮の採用、専門考慮の採用
Manami Suzuki, Naoki Ando and Hidehiko Nishikawa, (2019) “Recruitment of local human resources and its effect on foreign subsidiaries in Japan”, Management Research Review, Vol. 42 No. 8, pp. 1014-1032.
paper 2019.8.19
“Recruitment of local human resources and its effect on foreign subsidiaries in Japan,” Management Research Review
「日本の外資系子会社における現地人材採用と、その影響」