column 2018.1.5

「顧客と共創 ― 市場拡大の可能性:6大学×6ブランドスペシャルコラボ(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』

【図・写真】西川ゼミの学生が総長に報告

【図・写真】西川ゼミの学生が総長に報告

 製品開発を顧客と共創することがある。開発だけではなく、販売促進でも共創すれば、市場拡大の可能性を持つ。今回は青山学院大学、明治大学など都内6大学の学生とゾゾタウン、アパレル企業との「6大学×6ブランドスペシャルコラボ」を紹介したい。
 大学在校生やOB、OGを対象に、2017年10月から18年1月末までの限定販売の企画だ。10代後半から20代というゾゾタウンの少ない客層の新規顧客を増やすために計画された。
 法政大学は、アーバンリサーチとタッグを組んだ。学生は自分たちが欲しいグッズを考えた。大学ロゴやスクールカラーを使えば、大学らしいグッズになるが、そう簡単ではない。既存の大学グッズとの差別化や、色やロゴが目立つと普段着には利用しにくくなるからだ。しかも、多くの人に同じアイテムを着てもらうというハードルもある。
 複数の提案の中、おそろいの服を着るのは、サークル愛や部活愛など所属団体への「愛」が鍵だと気づく。法政大学には全国区で活躍する部活動が多く、応援するときに仲間意識や愛校心が生まれると考えた。
 こうした中、法政高校とのゼミ交流で、野球部の高校生の「応援席一面がオレンジ色で覆われていると本当に心強い」という一言から、スクールカラーの良さを理解する。そこで、表が紺などの定番色の「普段用」、裏がスクールカラーのオレンジ色の「応援用」のリバーシブルパーカーが生まれた。法政大学とアーバンリサーチの頭文字を組み合わせ、「HUR」というロゴも付けた。
 販促方法でも、自らが響く内容を考える。インスタグラムでは、多くの在校生や部活生が仲間で着用するシーンを投稿。ツイッターでは、建学の父であるボアソナード博士を学生がキャラクター化した「ぼあじい」が、ユーモアを入れ語りかける。学生は反応を見つつ、改善を繰りかえす。
 共創は企業に価値をもたらすが、学生にとっても大きな意義があった。今回は私のゼミ生が参加したが、母校の良さを改めて考えるきっかけになったからだ。
(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2018)「顧客と共創 ― 市場拡大の可能性(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2018年1月5日付け、p.15.