column 2014.10.2

「タブレット学習 ― 好敵手選抜、競って特訓:フレンズ(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 好敵手の存在が、新市場創造の可能性をもつ。その好例が、フレンズ(東京・品川、大生隆洋社長)が塾や小学校に提供するタブレットによる学習サービス「フレンズ算数特訓」だ。

 eラーニング(インターネットを利用した遠隔教育)だが、設計思想が特徴的だ。従来のサービスが生徒の自主性を前提に家庭での「学習ツール」を用意してきたのに対し、フレンズは生徒が受け身であることを前提に、教室で意欲を引き出す工夫をした「テストツール」を開発した。

 大生社長は「全国の学習塾、学校、そして海外の教育機関をつなぎ、子供たちが相互に刺激を受けながら学習のモチベーションを高められる場を提供する」と狙いを説明する。

 その仕組みは、生徒間の競争心を軸にした設計だ。生徒はタブレットに表示された計算問題をメモ欄で手書きで計算し、解答欄に記入する。即座に採点され、正解・不正解が分かる。

 画面には全国から自動的に選ばれた同レベルの成績の10人のアバター(分身キャラクター)と名前が表示され、各自の回答状況や順位が即時に表示される。

 計算が得意でも苦手でも、あるいは少人数の教室の生徒でも、自分と同じ水準のライバルとリアルタイムに競いあうことで、モチベーションが高まる。メンバーはいつも異なるため、常に1位、あるいは最下位ということがないのだ。好成績を収めれば、周りの生徒や先生から褒められ自信につながる。これがやる気を刺激する。個人戦だけでなく、教室対抗戦もある。

 週1回40分の講座では4回のテスト、週2回20分の講座では2回のテストを実施する。テストは3分の間隔を置くため、その間に不正解だった問題を復習することができる。

 同社のドリルを使ってテストの予習も可能なため、家庭学習にもつながる。

 こうした成功体験の連鎖が学習習慣を定着していく。生徒が速く正確に計算できるようになるなどの成果も出ているという。

 特訓シリーズは中学生向けの数学、英語、理科、社会へと広がる。さらに、受講日時が違ってもシステムに蓄積したデータを使い、同時に受講しているかのような対戦も可能という。

 企業での能力向上においても、同レベルで切磋琢磨(せっさたくま)できる好敵手の存在は重要であろう。単に競い合うだけでなく今回の事例でみたように、相互に褒め合える関係や場の設定が大事だ。(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2014)「タブレット学習 ― 好敵手選抜、競って特訓(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2014年10月2日付け、p.15