【写真】日清カレーメシ
多段階のブランディングが、新市場創造の可能性を持つ。既存のカテゴリーの中でブランドを立ち上げ、さらに大きく育てるために、新しいカテゴリーに位置づけを変える。まさに鉢の苗木を植え替えるのと同じだ。その好例が日清食品の「日清カレーメシ」=写真=だ。
カレーメシは、カップに水を入れて、電子レンジで数分間、加熱するだけで出来上がる即席カレーライス。2013年9月に、「カップカレーライス」として発売された。
当初は「カレーライス」との位置づけだった。「日清食品が作った究極のインスタントカレーライス」と簡便性を訴え、「レトルトカレーとは異なり、ご飯とお皿がなくても食べられるカレー」という新市場の創造
を狙った。ネーミングやデザインは同社のカップヌードルに似せ、売り場への浸透をはかった。
ブランドマネージャーの上原秀介氏は「大変好評で売れ行きも良く、顧客から『チキンラーメン以来のおいしさだ』との声ももらった。期待以上の味を実現できたのだと思う」と話す。
この好調ぶりにトップから、「単なる即席カレーライスではなく、新たな商品ジャンルを確立できるだけの大きな可能性がある」と指摘された。というのも、一般のカレーライスとは異なり、ご飯とルーが混ざって煮込まれていることから、これまでにない新しい味だったからだ。
こうしてリブランディングのプロジェクトがスタートした。14年4月、中身は従来のまま、「日清カレーメシ」とブランドを変更、「ルーでもレトルトでもない第3のカレー」として、新しいカテゴリーであることを強調した。まさに「カレーライスではない」との位置づけだ。名前も短く覚えやすくした。
販促では「理解不能な新しさ」をコンセプトに、不可思議なキャラクターが矢継ぎ早に登場する奇抜なCMや交流サイト(SNS)などを使い、新カテゴリーであることを訴えた。「カップカレーライスに需要があったという自信と、そのイメージから離れなくてはいけないという使命感があったからこそできた」と上原氏は語る。
カップカレーライスの実績から、売り場での導入も進んだ。売り上げはカップカレーライスを10%以上、上回っているといい、今後の成長に期待がかかる。
2段階でカテゴリーを使い分けたからこそ、見いだせた市場といえるだろう。(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2015)「2段階ブランディング ― 新市場創造の可能性(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2015年1月15日 付け、p.15