近年,顧客とのコミュニケーションにおいて, 企業がキャラクターを活用する事例が増えている。企業は,自社キャラクターをソーシャルメディアのアイコンとして利用するだけでなく, LINE スタンプ(消費者がコミュニケーションで利用できる画像)として配布するという現象が起きている。こうしたキャラクターの中には, 個人の化身である「アバター」のように,企業の化身となる「企業アバター」といえるものが ある。企業アバターとは,「企業の代表者として使用できる仮想キャラクター」(Holzwarth, Janiszewski, and Neumann 2006, p.19)である。それは,単に仮想キャラクターというだけではなく,ヴァーチャル・アイデンティティを持つという点が特徴となる(Solomon 2013)。
こうした企業アバターの成功事例の代表として,「ローソンクルー♪あきこちゃん」(以下,あきこちゃん)があげられる。あきこちゃんとは,株式会社ローソンによって,ソーシャルメディアでの情報発信のために,2010 年に作成されたローソンクルー(店舗スタッフ)をイメージした企業アバターである。2013 年日経BP 社ソーシャルメディアキャラクター認知度ランキングで1 位に選ばれるなど,インターネット上の有名人である(『日経デジタルマーケティング』2013年5 月号)。彼女は,LINE やTwitter,Facebook をはじめとするソーシャルメディア 22媒体を通して,毎日2600万人を超える顧客に,ローソンの最新情報を発信する(2017 年7 月現 在)。
では,企業アバターとは,どのような効果をもつのだろうか。本稿では,あきこちゃんのケースを通して,企業アバターの効果について,明らかにしていく。以下では,あきこちゃんの概要を説明した上で,あきこちゃんの効果について,展開時期に分けた上で,そこでの効果について,それぞれ確認していく。
白井明子・西川英彦 (2017)「企業アバターの効果 : ローソンクルー♪あきこちゃん ─ 株式会社ローソン」『マーケティングジャーナル』Vol.37 N0.2 pp.128-149.