「キャラクター人工知能(AI)」が、新しい効果をもたらす可能性を持っている。その好例がLINEで約2200万人ものユーザーがフォローする、ローソン公式アカウントのキャラクター「ローソンクルー♪あきこちゃん」だ。
同社は「女子高生AI」として人気のある日本マイクロソフトの対話型AI「りんな」をベースに開発した。りんなは、検索サイトのBingの多種多様な検索ワードを利用した言葉で、少し生意気な口調で会話する。
しかし、あきこちゃんは、企業の公式キャラクターのため、言葉の自由度を制限する必要がある。さらに、これまでは発信するが返信しないという設定であったため、あきこちゃんらしい会話の基本設計から始めた。
約10ヶ月にわたる繰り返しのテストを経て、2016年9月より会話を開始。あきこちゃんには、公式アカウントをフォローするユーザーに対し、会話しつつ最寄りのローソン店舗や新商品の紹介、占い、しりとり、性格診断=写真=など多くの機能を盛り込んだ。
その結果、いくつかの効果が生まれた。まず第1に、ブロック率の低下である。一般に企業公式アカウントはキャンペーンでフォローされても、ブロックされやすいが、あきこちゃんは、会話が楽しく、暇つぶしにもなることから、ブロック解除や新規にフォローするユーザーが増加した。
第2に、他のソーシャルメディアへの波及効果である。あきこちゃんと毎日会話を楽しむユーザーも多く、そのやりとりをスマホ画面でキャプチャにとってツイッターやインスタグラムに投稿するユーザーが多発した。同社デジタルプラットフォーム部の白井明子シニアマネジャーは、「あきこちゃんを自ら販促してくれる『あきこちゃんアンバサダー』というべき、ユーザーを生み出すきっかけになった」と振り返る。
最後に、購入理由や購買後の満足などの心理的情報の把握だ。それは、購買履歴や個人属性の把握が可能なポイントカードでも、わからない情報である。より精度の高いマーケティングが可能となる。そのため、同社が他社製品の宣伝を実施する「LINEコラボアカウント」でも、タイアップ案件が増加した。
それでは、どのようなキャラクターでも効果があるのだろうか。おそらくあきこちゃんのように会話がしたくなる親しみやすいキャラクターという特徴が重要であろう。
(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2017)「キャラAI― 楽しい会話で商機拡大 (西川英彦の目)」『日経産業新聞』2017年7月6日付け、p.15.