利用者がアイデアを簡単に投稿できるツールを用意すれば、新市場創造の可能性をもつ。その好例が、CUUSOOシステム(東京・品川)が運営するサイト「LEGO CUUSOO」=写真=である。
仕組みはシンプルだ。まず利用者が組み立て玩具のレゴブロックを使ったキット製品のアイデアをサイトに投稿する。一定の基準に達しているものが掲載され、1万人からの賛同票が得られるとレゴがそのキットの製品化を検討し、問題なければ発売される。1キット5000円なら5000万円の売り上げ見込みがたつというわけだ。つまり、リスクが回避できる。
2008年に日本語版、09年に英語版を始め、11年の刷新以降に会員が急増し21万人を超える。そのうち米国在住者が半分で、欧州、日本と続く。年齢層はレゴブロックの主体である子供ではなく20歳前後が中心で、18~55歳と幅広い。
現在、サイトには3700弱のアイデアを掲載。そこから、有人潜水調査船「しんかい6500」、小惑星探査機「はやぶさ」、デジタルゲーム「マインクラフト」という3つのキットが商品化された。
日本語版に掲載された最初の2つは1000票が目標で、達成までそれぞれ420日、57日かかったが、ソーシャルメディアの普及という後押しもあり、英語版に掲載された「マインクラフト」はわずか48時間で商品化に必要な1万票を集めた。現在、大学のキャラクターなど今まで市場になかった15のアイデアが1万人の賛同を得て、商品化が検討されている。
こうして利用者がアイデアを簡単に投稿できるツールにより新市場が創造された。新しい製品ラインが広がると同時に、多様な関心をもつ幅広い年齢の新しい顧客層に拡大できたのだ。
だが忘れてはいけないのは簡易なツールが用意されたというだけでなく、利用者が試作品を作りやすい環境があったということだ。レゴブロックは多くの家庭にあり、誰でも思いつけば気軽に参加でき、多数の人々が簡単に参加できる。そうした意味では、近年登場した個人が試作品を簡単に製作できる3次元(3D)プリンターを、企業は注目すべきだろう。(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2012)「アイデア投稿ツール ― リスク回避し新市場創造(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2012年12月6日付け、p.9.