【図・写真】近鉄百貨店でのコミュニティ運営支援プロジェクト(大阪市阿倍野区)
地域活性化には、一時的な盛り上がりだけでなく、継続的な取り組みが重要だ。カリスマ的な特定の人物が活動するのではなく、地域に住む多様な人々が主体的に活動することが重要である。その好事例が、studio―L(大阪市、山崎亮代表)によるワークショップを通したコンサルティングだ。
同社の特徴は、地域の住民全体に直接、働き掛けるのではなく、ワークショップを通じ、多様なコミュニティの創造や活性化を支援し、結果として地域全体が活性化するという手法だ。
例えば、兵庫県三田市の有馬富士公園では、当初2001年に41万人だった入園者数が現在約80万人に達する。以前は発表の場がなかった天体観測や凧(たこ)揚げ、演奏などのイベントが開かれる。参加団体は当初の22団体から82団体にまで増えた。活動が新たな活動を呼び込んだ形だ。
鹿児島市の中心部、天文館地区で閉店した三越鹿児島店跡を改装した「マルヤガーデンズ」でも、各フロアでほぼ毎日イベントが開かれる。料理教室や雑貨づくり、外遊び紹介などを220団体が催す。まるで商業施設の中に公民館があるようで、多くの人々が集まり、ついでに買い物を楽しむことが多いという。
プロジェクトの参加団体が他の団体と連携したり、新たなプロジェクトが生まれたりする。イベント参加者が次には実施者側となるなど相乗効果をもたらす。
こうした団体の形成に欠かせないのがワークショップだが、開催すれば良いというものではない。そこには幾つかの工夫がある。
同社では事前に、地域で活動する人々に会い、聞き取りを行う。目的は地域のニーズや課題の情報収集だけではない。その関係が、ワークショップの運営を円滑にする。さらに、ワークショップに参加したくなるように、案内状や備品は参加者を意識してデザイン。参加者が話しやすくするために、簡単なゲームなども用意する。そして、ワークショップを地域で実施できるよう支援する。こうした取り組みが、継続して活性化するため仕組みとなる。
(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2013)「studio-L ― ワークショップで地域活性化(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2013年4月25日付け、p.9.