column 2013.7.25

「ローソンクルーあきこちゃん ― 親和性高いキャラ、市場生む(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 関係者との親和性が、新市場を創造する。自社の顧客はもちろん、関係企業や協力企業にまで親しみを持ってもらえることが重要だ。その好例が、ローソンのソーシャルメディア上のキャラクター「ローソンクルー♪あきこちゃん」だ。

 あきこちゃんは、ツイッターを中心に27ものソーシャルメディアで、キャンペーンの告知や、クーポンの配布を行っている。そのスタイルは、フレンドリーに感想をつぶやくことが特徴だ。キャラクターの設定は20歳の女子大学生で、アルバイトのローソンクルー(店舗スタッフ)。マイペースで真面目、節約を心がけ献身的で、どこかの店舗にいそうな人物像である。このことが効果をもたらす。

 第1に、ターゲットとの親和性である。コンビニの顧客は20~30歳代の男性が多い。キャラクターの設定は、誰がつぶやいたら、彼らから良い印象を得られるかを考えた結果だ。さらに、あきこちゃんの顔や声を、顧客から募集したことも、親和性を増しているだろう。現在1千万人を超えるファンの数が、その効果を裏付ける。

 第2に、フランチャイズ加盟オーナーとの親和性である。社長や本社のスタッフではなく、アルバイトということで、オーナーにしてみれば、まるで自分の店舗で働いているスタッフのように、愛着をもってもらいやすい。加盟店向けのあきこちゃんグッズは、オーナーから好評だという。

 第3に、キャラクターを持っている企業とのタイアップがしやすい。キャラクターだけでなく、美術館などとのタイアップも行われている。擬人化されていることで、店舗でスタッフがお薦めしている感じで、イベントや商品の告知も行いやすい。

 だが、キャラクターの設定が良いだけでは、親和性を維持できない。つぶやく内容は、広告・販促、広報、商品企画、ITなど12の部署による編集ミーティングで決められ、多くの部門が関係する。「あきこちゃんなら、こうは言わない」という議論を重ねることで、キャラクターの世界観が守られる。さらには、消費者のつぶやきも、絶えずウオッチして反応を確認している。こうした、絶えざるマネジメントがあきこちゃんを支えているのだ。(法政大学経営学部教授)

 西川英彦(2013)「ローソンクルーあきこちゃん ― 親和性高いキャラ、市場生む(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2013年7月25日付け、p.9.