column 2013.12.5

「フェリシモの生活雑貨大賞 ― 消費者のアイデア商品化(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 制度を制度にとどめず、仕組み化することが、継続的な市場創造をもたらす。その好例が、通信販売大手のフェリシモが雑貨カタログ「クラソ」で展開している「生活雑貨大賞」だ。

 生活雑貨大賞はユーザーのアイデアを商品化する制度で2000年に始まった。例えば05年の発売以来、累計200万本を超す大ヒット商品となった「ゴムベルト」は、第4回優秀賞に選ばれた岩手県で子育て中の主婦の発案。カタログについた1枚のプランニングシートから誕生した=写真。

 プランニングシートには、子供のズボンを上げ下ろしする際の不便さを解消するため、ベルトを外す必要をなくすというコンセプトや、デザインなどが詳細に記載されている。ゴムベルトは、ベルト両端をズボン前面のベルトループに固定する構造。バックルが無いことから、妊婦など腹部への圧迫を避けたい人や、シルエットをきれいに見せたい人からも支持を集め、大人の男女向けに多様な商品に発展した。

 生活雑貨大賞は1年に2回開催され、1回に500件ほどの応募がある。まず、担当者がプランニングシートを読みコメントを記し、それを商品プランナーなどが約50点に絞り込む。さらに、特許に触れることが無いことを確認した上で、専門家や過去の受賞者、同社の開発責任者が最終審査し、選抜した優秀作をクラソで販売する。

 クラソに掲載している商品約900点のうち、生活雑貨大賞に選ばれたものが50点、ユーザーの意見を反映した商品が200点を占める。3割弱がユーザーと開発した商品で、カタログではそれがアイコンで明示されている。

 実は1980年代からユーザーから企画を募集する制度はあったものの、意見を部分的に取り入れるにとどまり、寄せられた意見を商品化することはなかったという。生活雑貨大賞という、仕組み化された制度は社内外に向けたコミットメントだ。だからこそ、ユーザーも社員も協力して、共に市場創造を継続できているのだと言えるだろう。(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2013)「フェリシモの生活雑貨大賞 ― 消費者のアイデア商品化(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2013年12月5日付け、p.9.