column 2016.11.8

「クラウドソーシング製品は、クラウドソーシング製品と表示して売ると、より売れる」 『Harvard Business Review Digital Article』

無印良品の家電部門でのフィールド実験(開発ソース表示ありのPOP)

無印良品の家電部門でのフィールド実験(開発ソース表示ありのPOP)

Martin Schreier, Hidehiko Nishikawa, Christoph Fuchs and Susumu Ogawa(2016) “Crowdsourced Products Sell Better When They’re Marketed That Way,” Harvard Business Review (Digital Article).

「クラウドソーシング製品は、クラウドソーシング製品と表示して売ると、より売れる」

 企業はクラウドソーシング(多様な人々による開発)を活用し、有望なアイデアを特定し、新製品を手に入れることが可能です。 私たちの過去の研究では、このトレンドへの期待が強調されています。例えば、大手のベビー用品企業の場合、ユーザー創造の最良のアイデアは、企業デザイナー(開発担当)によって創造された製品に比べて、より革新的で、消費者に便益も提供しています 。 日本の消費財企業の無印良品のケースでは、クラウドソーシング製品の売れ行きが良く、より収益性が高いことがわかりました

 しかし、クラウドソーシングを利用している企業は、それに関してあまり語っていない(つまりPRしていない)ことに気付きました。それは、見逃したマーケティング機会のようでありました。結局のところ、人々は有機食品が有機であることを知っていれば、それをより美味しいものと認識し、手作り製品が手作り品であるとわかっていると特に魅力的に感じます。ドイツ製エンジン、イタリア産パスタ、あるいはフランス産ワインは、原産国が消費者に明らかにされる場合にのみ、より高い品質と認識されます。

 私たちは、消費者がクラウドソーシングの新製品をどのように認識しているか、そして、その推測がどのように選択肢に影響を与えるかを見極めることにしました。私たちは、クラウドソーシングの新製品を、それを表示してラベリングすること、つまり、POPで製品を「顧客アイデア」として販売することで、製品の市場成果を最大20%向上させることができました。

 調査結果は、無印良品で実施された2つのランダム化されたフィールド実験(実際の店頭販売を通しての検証)に基づいています。 1つめの研究は食品部門で、もう1つは家電部門で実施されました。どちらの場合も、クラウドソーシングを利用して新製品(フレーバー付きプレッツェルと、セキュリティブザー)を開発しました。製品が発売されたときに、POPの表示を操作しました。 ある店舗群では、POPの表示は製品の開発ソースを言及していませんでした。他の店舗群のPOPの表示は、製品を顧客アイデアと明示して、販売していました。後者のグループが、実質的により多くの製品を販売しました。

 何が、この手がかりを、上手く働かせているのでしょうか? 一連のよりコントロールされたフォローアップ調査によれば、消費者は、自身のニーズをより効果的に捉えたアイデアに基づいているとして、顧客アイデア製品を認識していることが明らかになりました。一言で言えば、顧客アイデアとして、製品が販売されれば、より高い品質のものと思われる。あなたの子供のためのランチボックスがあり、ユムボックスが「ママが作ったもの」として販売されていることを考えてみてください。あるいは、自身のウェブサイトで「登山者だけが何を必要としているかを知る」というスローガンを目立つように使う、ユーザー起業家によって創られた登山靴ブランドのレッド・チリを考えてみましょう。もし、あなたが、私たちの研究参加者のように、これらの手がかりに反応するなら、ユーザーが考えたものが、あなたのニーズに合っていると推測するでしょう。

 これは、すべての製品をクラウドソーシング化して、それを表示して販売する必要があるという訳ではありません。まず、クラウドソーシングを働かせることは、自明ではありません。あなたが用意する製品が低品質であれば、クラウドシーシングとして販売することは逆効果を起こす可能性があります。言い換えれば、すでに製品が悪いと思っている場合、クラウドソーシングに注意を引くことは、現場の最先端のユーザーではなく、ホーマー・シンプソン(米国アニメ)タイプの群衆をイメージさせてしまう可能性があります。

 さらに、顧客アイデアとして、製品をラベリングする肯定的な効果は、消費者が優れたアイデアを生み出すために必要なスキルを持っていると消費者が認識している領域に限定される可能性がある。これは、私たちが研究したような、多くのローテクの消費財では効果があるかもしれませんが、複雑なハイテク製品ではそうではないかもしれない。

 最後に、「顧客アイデア」は、単に顧客に間違った手がかりを送る場合もあります。例えば、ファッションブランドは有望なアイデアを生み出すという意味でクラウドソーシングからの恩恵を受ける可能性がありますが、グッチやプラダなどのラグジュアリー・ブランドは、顧客アイデアとして積極的に販売すべきではありません。こうした製品では、高いステータスが得られないからです。

 しかし、顧客が、同じ気持ちの他人と、親しみを感じたり関連づけたりする場合や、他の顧客が必要としていることをよりよく知っていると思う場合は、クラウドソーシングの利用は、隠された特別な価値をもつかもしれません。より優れた新製品への有望なルートをつくるだけでなく、マーケターが顧客に開発ソースを積極的に伝えることによって、競合他社製品と差別化するのに役立ちます。

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