一般人の創作活動への支援に新市場創造の可能性が潜んでいる。それをうまく掘り起こした例が、GMOペパボの運営するユーザー同士がハンドメードの作品を売買するサイト「minne(ミンネ)」だ。
開始の経緯は2011年の社内公募にさかのぼる。ミンネ事業部の阿部雅幸副部長は、手作り市で見つけた作品が作家のブログに掲載されてはいるものの、ネットで売っていないことに疑問を感じていた。
探してみると作家が作品を売れる通販サイトはあったが、阿部氏のネットショップ構築サポートの経験からみると、ネットに慣れない作家にとっては、既存サービスは多機能で複雑にみえた。そこで作家がブログの記事を書くように、作品をアップして簡単に販売できるサービスを作ろうと、事業の提案をした。
12年にサービスを始め、現在作家は23・3万人、うち92%が女性で、300万もの作品が掲載されるサイトにまで成長した。ミンネのアプリも579万もダウンロードされ、年間流通額44億円にまで達する。
売り手も買い手も20~40代の主婦やOLが中心で、作家初心者が多い。友人の何気ない一言が、作家となるきっかけをつくる。入園・入学する子供のために作った布物や、自分で作った雑貨を近所の人や友達に「どこで買えるの?」と聞かれて手作りと答えると、「私も欲しい」と言われたり、友人の誕生日にあげた手作りのギフトを「ネットで売れるのではないの」とほめられたりしたときだ。
ただ作家として販売を始めても、初心者のため作品を上手に撮影できなかったり、利益の出ない値付けをしたりと課題は多い。新しいデザインをつくるのに行き詰まることもある。
そこでミンネでは作家をサポートする仕組みをつくりあげた。東京と神戸の「minneのアトリエ」で、毎週、勉強会を開催する。1回2時間で、8人ほどが参加する。ミンネのスタッフが、スマートフォン(スマホ)での撮影の仕方や、価格のつけ方などを講義する。
さらにアトリエでは、座談会も開催=写真。サービスの使用感を確認するだけでなく、作家同士の交流を促進する狙いだ。1人で解決できないことを、気軽に相談できるのだ。
ユーザー・イノベーションを継続させるには、サイトを提供するだけでなく、ユーザーのレベルにあったサポートの仕組みが肝要だ。(法政大学経営学部教授)
西川英彦(2016)「GMOペパボの『ミンネ』― 創作品の売買手助け(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2016年6月16日付け、 p.15.