column 2016.4.28

「女性向けウェブ媒体 ― 女優の服装・コスメ紹介:モデルプレス(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 従来とは異なるターゲット設定が新市場創造の可能性を持つ。その好例がネットネイティブ(東京・品川、松下佳憲社長)の運営する「モデルプレス」だ。女性向けエンターテインメントとライフスタイルをテーマにしたニュースサイトで、ツイッターやフェイスブックなどで多くの人に拡散される=写真=人気のウェブメディアだ。

 サイトを開設した2009年当時、芸能人や読者モデルなどのブログが、ダイエットやサプリメントの情報を発信し、人気を博していた。松下社長は「今後は、より信頼性が担保されるメディアの時代が来る」と考え、いつの時代にも存在し、飽きられることのないニュースに注目した。

 こうしたエンタメニュースはそもそもスポーツ新聞の十八番で、男性が主なターゲットだ。ネットネイティブは新聞はもちろん、ネット上にもなかった「女性向けのエンタメニュース」の配信サービスを始めた。

 だが新聞やテレビなど大手メディアの領域に対して出たての企業が取材するのは難しい。小さな取材から始め、だんだん信頼され、「また来て下さい」と言われるまでになった。

 後発だったため、すでにあるメディアと差別化するために、雑誌レベルの写真品質や撮り方で独自性を出した。従来のウェブメディアでは、そこまでの写真を掲載していなかった。こうして取材できる範囲は広がり、芸能人への独占取材ができるまでになった。

 こうした取材方法が、新しいコンテンツを生む。自社に写真を多くもっているため、複数回の取材で得た写真で、女優のコーディネートやメークをまとめて紹介し、どのブランドの服やコスメかを自力で調べて記事にすることができた。

 こうして記事はファッション、コスメ、トラベル、ダイエットなどライフスタイルの領域へと広がった。

 さらに、その企画力を買われ、テレビ番組の販促や、他社にコンテンツ提供のビジネスにまで広がる。JTBから依頼をうけ、ライフスタイルニュースサイトの「女子旅プレス」を企画・運営している。

 だが拡散力の高さは、ターゲット設定や企画力の良さだけが原因ではない。同社は、エンタメニュースであっても速報で伝えるのだ。芸能人の結婚情報も速報だからこそ、ソーシャルで拡散していく。まさに、ニュースがニュースといわれる理由でもある、スピードが肝要だ。(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2016)「女性向けウェブ媒体 ― 女優の服装・コスメ紹介(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2016年4月28 日付け、p.19.