column 2016.1.7

「エアレジ ―『リアルな接点』生かす(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 ネット上で提供されるサービスは多いため、顧客の囲い込みは容易ではない。だが、リアルでの行為とネットをうまく連携させる設計が、顧客を自然に囲い込みつつ、新市場を創造する可能性をもつ。その好例が、リクルートライフスタイル(東京・千代田)の「エアレジ」だ。

 エアレジは、小規模店舗向けのPOS(販売時点情報管理)レジアプリだ。スマートフォン(スマホ)やタブレットにダウンロードすれば、すぐに使える。

 同社の大宮英紀執行役員らが「IT化が進む中、リクルートの既存資源を生かして、新たな中小企業支援サービスができないか」という模索から開発がスタート。同社は、飲食店の検索・予約サイト「ホットペッパー」などの中小企業支援サービスを通して、多くの中小企業との接点という資源をもっていた。

 小規模事業者が高機能POSレジを導入するのは難しいが、アプリなら可能と考えた。しかも、1店舗にレジは1台で十分なため、顧客を囲い込め、レジシステムをハブに、サービスも展開できる見込みがある。

 2013年はじめ、リクルートライフスタイルは副業が可能なため、メンバーは飲食店で実際にアルバイトしてみて、業務を体験する中で、システムの要件定義をした。13年11月にサービスを開始。利用希望の店舗にiPadを無料で配布したことや、導入費用やシステム利用料がかからないこともあり、約2年で飲食店を中心に21万店を超える規模にまで広がった。

 エアレジは、飲食店での店員の行為とネットをうまく連携できる。店員はiPadの画面で座席を指定し、オーダーを入力する。ネット上でデータが管理され、会計業務、売上管理などが可能になる。売り上げもネットで適時把握できるので=写真、オーナーに日報報告も不要だ。

 さらにオーダーを受ける際に座席を指定することで、連携する予約管理システムに、座席情報が更新され、即時に予約受付ができる。近年、直前に飲食店を探す消費者が増えている。今までの仕組みだと、適宜空席を確保するのは面倒だがこれなら自然にできる。操作も直感的に使えるデザインにしている。

 現在、エアレジ関連の事業ではカード決済手数料の一部を受け取っているだけだが、今後他社との連携サービスが増えれば、売れ筋情報の提供や共同仕入れなど新たな収益を生み出す可能性を持っている。(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2016)「エアレジ ― 『リアルな接点』生かす(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2016年1月7日 付け、 p.15