column 2019.2.22

「個別研究会と学会 ― 補完し合い活性化:リサーチプロジェクト(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』

 個別研究会と学会との補完関係が研究を活性化させる可能性を持つ。その好例が、日本マーケティング学会(会長、古川一郎・武蔵野大学教授)の「リサーチプロジェクト(リサプロ)」だ。

 学会は2012年に設立され、会員数は2000人を超える。設立の狙いは、研究者と実務家が交流できる「探求と創発の場」の提供だ。

 こうした場を絶えず、提供し続けてきたのが、リサプロである。マーケティングに関するテーマを掲げた、大学教員であるリーダーを中心にした5人以上の会員グループであれば、常任理事会承認のもと立ち上げられる。ただし、研究者と実務家の混成が条件で、学会員に向け、年1回以上の研究報告会開催が義務となる。

 こうしたリサプロは現在33あり、ブランド、サービスなどの領域だけでなく、現実のマーケティングに呼応するように交流サイト(SNS)、地域、医療、スポーツ、農業、鉄道、宇宙、デザイン、共創、人工知能(AI)、知財など多様な領域にまで広がり、マーケティング研究の裾野を拡大している。

 昨年度52回もの報告会が開催され、カンファレンスでの開催を含めると74回になる。このように頻繁に開催できるのは学会がバックヤード業務を集中処理し、リサプロは研究会に専念できるからだ。報告会のサイトやメールマガジン、SNSでの告知をはじめ、申し込み、決済や領収書発行などは学会のシステムで対応できる。会員の参加費も、各リサプロが運営費として全額利用できる。

 学会側のメリットも大きい。リサプロが研究の場を提供するだけでなく、自ら集客をするため、新たな会員の入会を促進するからだ。このように、補完関係にあるのだ。

 一昨年より、他研究会にも参加しやすくしてほしいという声をうけ、東京、大阪、札幌で合同研究会を開催。通常の研究会を合同開催するだけなので簡易に実施でき、会員はどれか1つに申し込めば、全ての研究会に参加できる。先月、青山学院大学で13の研究会で開催され330人が参加した=写真。一般的に大掛かりとなる合同開催が、各地で容易にできるのも補完関係のおかげだ。

(法政大学経営学部教授)


西川英彦(2019)「個別研究会と学会 ― 補完し合い活性化(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』2019年4月5日付け、p.11.