column 2011.10.6

「ネット使い学生が商品企画 ― 過程で互いに刺激、学習:Sカレ(西川英彦の目)」 『日経産業新聞』

 競争は、創造性に有効だろうか。商品企画のプロセスにおいて意図的に競争を設定して、創造性を高めているプロジェクトがある。それが、インターネットを利用して商品を企画する大学生のインカレ(学生選手権)である「Sカレ」の事例だ。

 今月4日、Sカレのサイトがオープンした。6年目を迎える今年は、協力メーカーより出題された家具をはじめ小物、かばん、菓子、スマートフォン(高機能携帯電話)のアプリ(応用ソフト)など10テーマを東北から九州までの17大学368人の学生115チームが、サイト上で商品企画を提案する。11月26日開催の報告会で、消費者からの人気投票を参考にして、テーマごとに各メーカーが商品化する企画を1つ選択する予定だ。

 Sカレは、いわゆる学生コンペだが、大きく異なる特色がいくつかある。一般的なコンペだと、企画提案がゴールだが、Sカレでは商品化が目標となる。実際、多くの商品が発売されている。次に、一般的には最終の報告会でライバルの提案内容が分かるが、Sカレでは商品企画の過程で公開される。その過程で、実際の消費者とも対話ができることも他にはない特色だ。

 これらによって、消費者からの意見や人気が分かると同時に、参加者同士がお互いの企画の内容や活動を知ることになる。まさに、企画段階で競争が起こる訳である。

 こうした競争により、学生は自ら相互に学習するという。例えば、サイトや画像・動画などの制作、試作品製作の技術、SNS(交流サイト)の使い方、観察法やアンケートなどの市場調査の手法など当初はできなかったものが、ライバルの行動に触発されて、自分たちで相互学習する。すなわち、プロセスの過程でのダイナミックな相互学習が起こるのである。

 こうした手法は企業でも有効だろうか。企業においても、身近な者の頑張りは、触発されるのではないだろうか。さらに、社長賞やトップセールスマンの表彰がある場合、その結果を聞くだけではなく、プロセスを見ることができたら、自らもそうなりたいと思うかもしれない。(法政大学経営学部教授)

「ネット使い学生が商品企画 ― 過程で互いに刺激、学習:Sカレ(西川英彦の目)」『日経産業新聞』 2011年10月6日付け、p.9.