column 2012.11.15

「用途開発 ― 無印良品、顧客から直接ヒント(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 ユーザーによる想定外の使い方は新しい製品価値の創出や新市場創造につながる可能性がある。だが、こうした使い方にメーカーはなかなか気づきにくい。それを発見するヒントとなる好例が、良品計画が運営する総合雑貨店「無印良品」の再販売要望の仕組みだ。

 昨年12月に無印良品のウェブサイト上で始めた「あったらいいな!ご意見パーク」では、同店の「モノづくり」に対し毎週200件の要望がユーザーから寄せられる。そのうち半分がかつて販売した製品の「復刻」の要望で、残りがサイズや色など仕様変更の要望と、新製品アイデアに二分される。その要望に応えて再販売した製品は、ご意見パークを始めてから既に68件を超える。

 再販売要望の中には、集中して挙がるものがいくつかあった。その一つが「シリコントレー/ビー玉」だ。氷菓やチョコレートなどのお菓子を作る型である。人気の要因は何かと担当者がネットで探すと、樹脂アクセサリー作りの型として利用されていることが分かった。ネットで「シリコントレー/ビー玉」と検索すれば、たくさんの作品を見ることができる。要望に応えて、無印良品が4月に限定販売したところすぐに売り切れ、今月には4度目の販売となった。

 同じように集中して要望が挙がるものに「再生紙週刊誌4コマノート」があり、10月に再販売した。本来の用途である4コマ漫画だけでなく、プレゼンテーションの下書きやデザインのアイデア出しなどに利用されているという。いずれもユーザーによって用途が開発されていて、新しい製品価値が創出されている。

 そもそもこれらの製品の販売をやめた経緯は売り上げが思わしくなかったからだ。ニッチな市場かもしれないが、わざわざ要望するというのは新しい用途など他にはない独自の価値をもっている可能性がある。

 だが、忘れてはいけないのは、無印良品が汎用性の高い製品を提供していることだ。ユーザーの工夫によっていかようにも使えるシンプルなデザインで、できるだけ用途を限定しないように設計されている。再販売要望に応える姿勢も重要だ。要望に応えるからこそ、意見してくれるのだ。(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2012)「用途開発 ― 無印良品、顧客から直接ヒント(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2012年11月15日付け、p.9.