column 2013.1.10

「デザイン・マネジメント ― 新市場創造へ販売も支援:アッシュコンセプト(西川英彦の目)」『日経産業新聞』

 デザインから経営までのデザイン・マネジメントは、新市場創造を生み出す可能性をもつ。一般的に、デザインと経営の両方を理解することは難しいという。経営者とデザイナーは互いに遠慮するか、過大に評価しすぎてしまう傾向もある。だが、両方の深い理解こそが重要であり、時にはそれを理解できるコンサルタントの助けも必要だ。その好例が、2002年設立のデザイン会社アッシュコンセプト(東京・台東)だ。

 その社名を知らなくても、手掛けた商品を見れば分かる人も多いだろう。全世界で2000万個以上売れた動物の形をした輪ゴム「アニマルラバーバンド」(315~630円)など、雑貨店に行けばよく見かける商品を数多く扱う。

 自社製品だけでなく、メーカーがデザイン・マネジメントできるようコンサルティングにも当たる。そのメーカーが得意とする技術を見いだしてデザインに協力し販路を開拓、共に世界に通用するブランドに育てていく。そのため同社はデザインの大型見本市で関わった商品を展示し、世界中の流通やメディアに販促する。昨年は事務所と併設した直営店「コンセント」を開いた。商品の販路を自ら持つだけでなく、売り方やパッケージ、製品の改善にもつなげられる。

 木製家具メーカー、匠工芸(北海道東神楽町)とのコラボレーション(共同企画)では、得意の大型木工家具にこだわる匠工芸に対し、日本の狭い空間にも合うカジュアルなデザインの家具が必要だと訴えた。その結果、匠工芸にあった家具を小型化した座面が直径22センチメートルで組み立て式の手軽な椅子(1万5750円)=写真=と机(4万7250円)が生まれた。

 アッシュコンセプトが販売を支援し、セレクトショップでも販売する。動物の形をしたアニマルスツール(2万9400~3万9900円)は匠工芸がOEM(相手先ブランドによる生産)を望んだが、アッシュコンセプトは匠工芸のブランドで発売することにこだわった。

 単にコンサルティングだけではデザイン・マネジメントは根付かない。デザイン・マネジメントが自活できるよう支援することが重要だ。互いの強いネットワークこそが相乗効果を発揮し新市場創造をもたらす可能性を高めるのだ。(法政大学経営学部教授)

西川英彦(2013)「デザイン・マネジメント ― 新市場創造へ販売も支援(西川英彦の目)」『日経産業新聞』2013年1月10日付け、p.9.